外国人の労働力「反対」59%…読売・早大共同世論調査
読売新聞12月2日付
労働力として外国人を積極的に受け入れるべきかについて聞くと、「反対」が「どちらかといえば」を含めて59%で、昨年11~12月調査の46%から急増した。
今回は、外国人は安く雇用できるから日本人の仕事が奪われる!というよく言われる問題について、真面目に解説していきたいと思います。長文・駄文になりますが、ご容赦ください。

まず、結論を端的に言うと、「外国人労働者は安い」という説については、「安く雇うことは違法」ですが、「統計上の平均値では賃金は日本人より低い」という事実があります。
この乖離がなぜ起きるのか、具体的に解説します。
1. 【法律の根拠】「安く雇う」ことができない理由
日本では、以下の法令により、外国人であることを理由にした低賃金は明確に禁止されています。
(労働基準法 第3条)(均等待遇)
「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」
意味:「外国人だから時給を低くする」という行為は、この条文により直ちに違法となり、処罰の対象です。
(最低賃金法)
日本の最低賃金法は「日本国内の事業場で働くすべての労働者」に適用されます。
意味:技能実習生であっても、各都道府県が定める最低賃金(例:東京都なら時給1,163円など)を下回る契約は無効であり、差額を支払う義務が生じます。
入管法(特定技能基準)
在留資格「特定技能」の許可要件として、省令で以下のように定められています。
要件「報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること」
意味: 同じ職場で同じ仕事をしている日本人が月給20万円なら、外国人も20万円以上でなければビザが下りません。
2. 実際の金額はどうなっているか
厚生労働省が毎年実施している「賃金構造基本統計調査(令和5年)」の客観的データを見ると、実態が分かります。
ここでのポイントは、「在留資格(ビザの種類)」によって賃金が全く違うという点です。
全体の平均賃金(月額)
日本人(正社員):約 32万円前後
外国人(全体):24万8,800円
根拠:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」
一見すると「外国人は日本人の約7〜8割の賃金」に見えます。しかし、これを中身(在留資格)で分解すると景色が変わります。
在留資格別の賃金格差(月額平均)
1. 専門的・技術的分野(エンジニア・通訳など)
平均:32万4,000円
分析:日本人の平均と同等、あるいはそれ以上です。高度なスキルを持つ外国人は決して「安く」ありません。
2. 身分に基づくもの(永住者・配偶者など)
平均:28万1,700
分析: 日本社会に長く定着しているため、日本人の平均に近づきます。
3. 特定技能(建設・介護・飲食など)
平均:21万5,200円
分析: 日本人の平均より低く見えますが、これは従事する産業自体の賃金水準が影響しています。
4. 技能実習(実習生)
平均:18万3,000円
分析:ここが最も低く、全体の平均を押し下げています。多くの実習生は「最低賃金」に近い水準で雇用されています。
3. 【結論】なぜ「安い」と思われているのか(構造的なカラクリ)
法律で「日本人と同じにしろ」と言われているのに、なぜ統計(特に技能実習生)では安くなるのか。これには3つの客観的な理由があります。
1. 年功序列賃金の影響(年齢と勤続年数)
日本の賃金データは「勤続年数が長いほど高い」傾向があります。
外国人労働者(特に技能実習や特定技能)は、20代〜30代と若く、勤続年数が短い(制度上3年〜5年など)ため、勤続20年の日本人ベテランと比べれば必然的に平均賃金は安くなります。
比較:「入社1年目の日本人高卒・大卒」と「技能実習生」を比べた場合、その差はほとんどなくなります。
2. 産業構造の問題
外国人労働者(特に技能実習生)が多く働く「繊維産業」「農業」「建設業の下請け」などは、日本人従業員であっても賃金水準が低い業界です。
「外国人が安い」のではなく、「その業界の賃金相場自体が低い」というのが正確な解釈です。
3. 採用コスト(見えないコスト)
これは賃金データには表れませんが、外国人を海外から呼ぶ場合、渡航費や監理団体への管理費、紹介料などで、1人あたり数十万円〜100万円近い初期費用がかかる場合があります。
そのため、企業側からすると「トータルコストで見ると、日本人を雇うより高くつく」というケースも多々あります。

まとめると、
①外国人という理由で賃金を安く設定することは違法なのでできない
②データとして外国人労働者の賃金が低くなっているのは、
(1)外国人労働者が多い産業分野はそもそも平均年収が低い
(2)特定技能や技能実習生は若者が多く、勤続年数も短いため給与が低い
ということになります。
さらには、外国人雇用の際は、招へい費用や紹介料、支援機関へ支払う支援費など「隠れコスト」がある点にも留意が必要です。











