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育成就労制度案が発表(介護は転籍制限ありで令和の「人返しの法」?)

育成就労制度案が発表(介護は転籍制限ありで令和の「人返しの法」?)


育成就労、介護の転籍制限2年 技術習得などに必要〈入管庁案〉

 外国人の技能実習制度に代わって2027年に創設される育成就労制度について、入国管理庁などは17日、職場を変更する転籍を制限する期間の案を有識者会議に示した。  介護は「2年」とされ、利用者とのコミュニケーションに必要な日本語能力、介護の専門技術などの習得に一定の期間を要することや、地方から賃金の高い都市部への過度な流出が懸念されることから判断した。

福祉新聞 2025年9月22日付 

このような記事がありました。

育成就労制度は様々な問題点が指摘されていた技能実習制度に代わる制度になります。

基本転籍(転職)は自由となります。しかし、現段階の案では介護などの8分野においては、2年間の転籍制限が設けられる予定です。

2年間の転籍制限を設ける理由として、

①【人材育成の観点】
介護は継続した利用者のいる対人支援サービスであり、利用者との日常的なコミュニケーションを通じた日本語能力の向上や、継続的な実践による利用者との信頼関係の醸成が重要であり、更に疾患や障害の理解、チームケアや他職種連携、利用者の自立支援や看取りなど、多様な状態像の変化に対応できる専門職としての知識や技術、倫理などの修得には一定時間を要する。この期間は育成就労外国人本人が将来的に特定技能1号に移行し、介護福祉士国家試験の合格を目指す上でも必要である。

②【人材確保の観点】
介護分野の都道府県別有効求人倍率においては、東京都など大都市圏の倍率が全国平均よりも高くなっている(令和7年6月時点で、全国3.87倍、東京都8.21倍)など、大都市圏での需要が高い傾向が見られることから、転籍を制限しなければ、地方において就労を開始した育成就労外国人がより賃金の高い都市部へと過度に流出する恐れがあるため

③【その他】
多くの認知症利用者をはじめとした利用者にとっては顔なじみの職員による継続的なケアは生活の質を維持する上で非常に重要であり、また、その家族としても、安心してケアを任せられるという点で、継続してケアを行うことの意味は大きいため。

実質、①と③は実質同じことを言っており、とって付けたような理由であると思います。明らかに②の都市部への流出が一番大きな問題であると業界団体からも意見があったようです。

このような制限を設けたとしても、あまり意味がないような気がします。

介護分野はその報酬が介護報酬として決められており、支払う給与を各法人の努力で上げるのはなかなか困難です。

入管案では処遇改善加算による待遇向上策が検討されていますが、日本人と同等以上の給与の支払いが定められている以上、外国人労働者にその比重を置くと、今度は日本人の方が辞めていくのではないのでしょうか?

ただでさえ、特定技能や技能実習生は日本語が不自由であり(特定技能に求められる評価試験をパスしていたとしても)、日本人スタッフにその負担はかかります。

私どももよくご相談を受けますが、外国人は日本人より給与を低くできないとご説明すると驚かれる経営者の方がほとんどです。

話がそれましたが、このような都市部への流出のための転籍制限を設けたところで、外国人のコミュニティの情報はすさまじいですから、○○県や△△地方はやめた方がいいと広がるだけですし、半ば騙したとしても、不法滞在者が増えるだけではないでしょうか。

中学の時に日本史の授業で「人返しの法」というものを習った記憶があります。

人返しの法
ひとがえしのほう
江戸後期,天保の改革の一環として老中水野忠邦が出した帰農令
人返し令ともいう。1843(天保14)年発令。農村の窮民が江戸に流入するのを禁じ,江戸に流入した農民も長年商売し妻子をもち江戸人別帳に記載された者以外は帰農させた。減少した農村人口の増大と貢租の増加をはかり,封建社会再建をめざしたが実効は少なかった。

令和の時代に関所を設けて「人返しの法」を実践するつもりなのでしょうか?

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